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共同研究

生物に無害なセンサとIoT技術で水族館の業務効率化と安全な施設運営に効果 KDL・帝国通信工業・átoaの3社が水族館における漏水予防の共同研究

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会社神戸デジタル・ラボ(兵庫県神戸市中央区、代表取締役:永吉 一郎、以下 KDL)と帝国通信工業株式会社(神奈川県川崎市、代表取締役社長:羽生 満寿夫、以下 帝国通信工業)とAQUARIUM x ART átoa(アトア)(兵庫県神戸市中央区、館長:中山寛美、以下átoa)は、昨年10月より3社共同で実施している「水族館における漏水予防の共同研究」においてセンサおよび検知内容等に関する改善を重ねた結果、水族館の業務効率化や安全な施設運営に向けて、一定の効果が期待できることを実証したことを発表いたします。

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水族館における漏水予防の共同研究の背景

帝国通信工業が実施した、公益社団法人日本動物園水族館協会へのヒアリングによると、水族館などの水族を飼育する施設における漏水事故の発生頻度は、規模の大小を問わず含めると決して珍しいものではなく、全国の水族館で課題として顕在化しています。

原因は、ポンプや配管の詰まりによるもの、不意の電源停止によって循環ポンプが止まることによるもの、設備の老朽化に伴うものに加えて、水栓の閉め忘れなどのヒューマンエラー等が挙げられます。程度や状況によっては飼育している水族や来館者にも影響が及ぶ可能性もあり、巡回等による人的対策を実施するなど施設の業務やコストの負担増につながっています。

共同研究の概要

共同研究では、帝国通信工業がフィルム式の静電容量式センサを水族館向けに改良した「No-Blue(ノーブル―)」を開発。センサまで水位が達すると、飼育スタッフのスマートフォンのメッセンジャーアプリ「LINE」に通知が届くという仕組み、および検知データを可視化する仕組みの構築をKDLが担当しました。また、átoaの「展示水槽」や「ろ過槽(※)」などに「No-Blue」を取り付け、テスト・評価をátoaの飼育スタッフが担当しました。

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   センサおよびデバイス設置の様子   
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      センサ「No-Blue」      
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   スマートフォンへの通知   
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  データを可視化したダッシュボード  

研究では、異常水位を判定し通知できるか、または飛沫などに対して誤検知しないかのほか、海水での使用による塩の結晶の付着などに耐えうるか、現場の業務に支障がないかなど様々な観点で試作を重ね、評価を行いました。

※ろ過槽・・・生物がいる水槽の水をきれいにするための水槽。生物の水槽の水はろ過水槽に送られ、このろ過水槽内でフィルターやバクテリアなどの力で水をきれいにし、ポンプで生物の水槽に戻す。

研究における成果では水溜め時の水位検知に活用

3か月の実際の設置に基づく研究においては、模擬的な漏水テストで漏水を検知し、自動で通知されることが確認できました。また、水槽への水の補充時に使用し、適切な水位で通知されることが実証されました。これは、研究で使用したセンサによる検知と通知の仕組みが、水栓の閉め忘れなどのヒューマンエラーによる漏水事故を予防できる可能性が高いことを示しており、業務の効率化および働き方改革への寄与につながることが見込まれます。

また、このたびの研究により、センサやデバイスの取り外しや再設置が簡単で、且つ作業や展示の妨げにならないなど、安全で手軽に利用できるものに改善されました。企画展示など水槽の移動が多い際にも、設備や周辺の環境に依存することなく様々な施設・シーンでの活用が期待できるものとなりました。

今後の展開

これまでの試験を通じて、機械的な部分は必要な要件をほぼクリアすることができたように思います。今後は、より現場で使いやすいもの、使いたくなるものへの改良を進め、実際に運用の中に組み込んでいきたいと考えています。