カワウソ Otter

知ってほしい。カワウソのこと。

水族館の人気者「カワウソ」。小さくて可愛らしい容姿や愛くるしい仕草に、心奪われている人も多いはず。
しかし、カワウソを取り巻く環境は”かわいい”だけで済まされない、さまざまな諸問題に晒されています。

カワウソを守るためには何が必要でしょうか?そして、わたしたちに何ができるでしょうか?

átoaでは、来館者にカワウソへの理解を深めてもらうためSKYSHOREにて解説看板を展示しています。
このページでは展示情報に加え、カワウソの特性や置かれている状況などをご紹介しています。知識を持って大切に守っていくために、わたしたちにできることを一緒に考えてみましょう。

コツメカワウソの写真

カワウソってどんな生きもの?

カワウソは食肉目イタチ科カワウソ亜科に分類される構成種の総称で、
世界中(オーストラリア大陸と南極大陸を除く)に7属13種類のカワウソの仲間がいます。

日本の動物園・水族館で見ることができる カワウソの仲間

  • コツメカワウソ

    コツメカワウソ

    コツメカワウソ

    コツメカワウソ

    • 学名 :Aonyx cinereus
    • 英名 : Asian Small-clawed Otter
    • 生息地 : 東南アジア・インド・中国南部

    最も体が小さいカワウソ。小さな爪がついていることがその名前の由来。一夫一妻制で家族を中心とした群れで暮らす。カニなどの硬い殻をもつ獲物をかみ砕くのに適した大きな臼歯を持つ。

  • ユーラシアカワウソ

    ユーラシアカワウソ

    ユーラシアカワウソ

    ユーラシアカワウソ

    • 学名 :Lutra lutra
    • 英名 : Eurasian Otter
    • 生息地 : ユーラシア大陸、アフリカ北部

    最も広く分布するカワウソ。通常は夜行性で、単独で行動する。かつて日本に生息したニホンカワウソは、ユーラシアカワウソの亜種だという見解があるが、生息地の破壊や乱獲により2012年に絶滅種に指定された。

  • ツメナシカワウソ

    ツメナシカワウソ

    ツメナシカワウソ

    ツメナシカワウソ

    • 学名 :Aonyx capensis
    • 英名 : African Clawless Otter
    • 生息地 : 南アフリカ

    名前の通り前足には爪がなく、後足には第2・3・4指に小さな爪が残るのみ。前足の水かきも少なく、器用な指先で獲物を捕らえる。水辺から離れて生活することはないが、森林地帯から半砂漠地帯など、多様な環境で見られる。

  • カナダカワウソ

    カナダカワウソ

    カナダカワウソ

    カナダカワウソ

    • 学名 :Lontra canadensis
    • 英名 : North American river otter
    • 生息地 : 北アメリカ

    北米ではかつて、過剰な捕獲と汚染によって大きく数を減らしたが、新たな環境規制や再導入プログラムの成功により、個体数が回復した。妊娠期間は2か月程度であるが、着床のタイミングを遅らせることができる。

  • ラッコ

    ラッコ

    ラッコ

    ラッコ

    • 学名 :Enhydra lutris
    • 英名 : Sea Otter
    • 生息地 : 北太平洋

    カワウソの中では唯一完全海生で、生涯上陸しない個体もいると言われている。他の海洋哺乳類とは異なり、低体温から身を守る脂皮が少なく、その代わりに哺乳類の中で最も厚い毛皮を持つ。この毛皮は毛皮商人に珍重され、19世紀半ばには絶滅寸前まで追い込まれた。

詳しく見てみよう! コツメカワウソの体

赤色の吹き出しを押すと詳細を見られます

カワウソが絶滅危機!?

13種類いるカワウソの内、12種類の数が減っており、
7種類がIUCNのレッドリストで絶滅危惧種(VU+EN)に指定されています。

絶滅危惧種
(EN,VU)

  • ラッコ(EN)
  • オオカワウソ(EN)
  • ミナミウミカワウソ(EN)
  • スマトラカワウソ(EN)
  • チリカワウソ(EN)
  • コツメカワウソ(VU)
  • ビロードカワウソ(VU)

準絶滅危惧種
(NT)

  • ユーラシアカワウソ
  • ツメナシカワウソ
  • コンゴツメナシカワウソ
  • オナガカワウソ
  • ノドブチカワウソ

低懸念(LC)

  • カナダカワウソ

※IUCNレッドリストとは

国際自然保護連合(IUCN)が作成する、絶滅の恐れのある野生生物をリストアップし、データベースにまとめたもの。 IUCNでは、それぞれの専門分野の研究者グループが、野生生物を調査した結果に基づき、野生生物1種ごとの絶滅危機の度合いを査定します。 危機のランクは、図のような形に分けられています。

IUCNレッドリスト分類の画像

カワウソの数が減っている理由

  • 生息地の開発や水質汚染による環境破壊
  • 毛皮やペット目的による乱獲
  • 漁業被害による害獣としての駆除
  • 交通事故(ロードキル)

など、様々な要因が考えられます。

コツメカワウソをペットに!?

日本で大人気のコツメカワウソ。
ペット需要が非常に高く、
実際アンケートでは2人に1人が飼ってみたいと回答しました。(2023年・2024年átoa調べ)
理由のほとんどがかわいいから。でも、家庭での飼育はとても難しく大変です。

átoaで実施したアンケート調査について、詳しくはYoutubeで公開中

カワウソがペットに向かない理由

1たくさんの魚介類を食べる

コツメカワウソは魚やカニ・エビ・カエル・ヘビなど様々なものを食べます。消費エネルギーも多く、1日で食べる量は自分の体重の約10~20%にのぼります。また、カニを甲羅ごとかみ砕いて食べられるほど、強い歯と顎を持っています。もし噛まれてしまうようなことがあれば大怪我を負いますし、手先も器用なのでいろいろなものを触って噛んで壊されてしまいます。

2暖かく、自由に泳げる環境が必要

コツメカワウソは東南アジアなどの温暖な気候の水辺で暮らす動物で、水陸ともに広範囲を移動するため、広いスペースや自由に泳げる水場を準備する必要があります。また、さむい冬にはヒーターや暖房がかかせませんし、水をきれいに保つためにまいにち水換えを行う必要もあり、電気代や水道代がかなり高額になります。

3大きな鳴き声

コツメカワウソは仲間と鳴き声を使ってコミュニケーションをとります。鳴き声の種類は少なくとも10種類以上あると言われています。なんとその声は大きい時には100dBを超えるそう。これは電車のガード下並みの騒音レベルに相当します。

動物病院や獣医さんが見つからない

4動物病院や獣医さんが見つからない

犬や猫であれば、充実した情報があり、病気になっても通常は近くの動物病院で診てもらえますが、コツメカワウソは、まだ知られていないことも多い野生動物です。詳しい獣医さんが近くにいるとは限りません。いざ病気になったときに診てもらえず、適切な治療が施せなかったり手遅れになってしまったりすることがあるかもしれません。

5ゆるくて臭いウンチでマーキング

コツメカワウソは縄張りを持ち、ウンチでマーキングをします。コツメカワウソのウンチは水分を多く含み、ゆるいのが通常です。そのウンチを踏みつけたり尻尾を使ってばら撒いたり、擦り付けたりする個体もいます。ちなみに、匂いはなんとも言えないほど強烈に臭いです。

そのほかにも、 野生動物をペットをするには
様々なリスクが…

  • アニマルウェルフェアを損ねる

    動物を飼育するには生態や習性を十分に理解し、その欲求を満たす環境を整える必要があります。与える餌や温湿度の維持、特別な設備などを管理するには多額の費用や労力がかかりますが、それらを一般家庭で準備し、維持することは容易ではありません。また、まだ生態が十分に明らかになっていない野生動物もいます。適切な飼育方法や飼育環境を整えられない場合、動物に精神的・肉体的に大きなストレスを与えてしまい、動物を幸せに飼うことはできません。

  • 動物由来感染症

    野生動物は、未知の病原体を保有していることが多く、哺乳類と鳥類が保有し、人間に感染する可能性があるウイルスは、80万種以上とされています。特に重篤な病気をもたらす病原体を保有している可能性の高い、サル類やコウモリ類などは、輸入が禁止されています。また、野生動物との直接的な接触は、感染症のリスクを伴うため、日本の厚生労働省のガイドラインには、特定の動物とのふれあい行為を推奨しないことも明記されています。

  • 外来種を発生・拡散

    ペットとして飼われていた野生動物がなんらかの理由で逃げてしまったり、飼いきれなくなって野外に遺棄されたりすると、その地域の生態系や人の生活に大きな影響を及ぼす「外来生物」になることがあります。例として、北米原産のアライグマは過去にペットとして大量に輸入されましたが、飼いにくさから野外に遺棄されることが多発し、現在日本の各地で野生化した個体が確認されるようになり、「特定外来生物」に指定されています。

  • 密猟・密輸を助長

    ペット利用される野生動物の中には、捕獲や輸出が規制されている動物もいますが、こうした動物はその希少性から、高値で取引されるため、密猟や密輸の標的になっています。2007~2018年には合計1,161匹もの野生動物が密輸の疑いにより、日本の税関で押収されました。ただし、発覚するものは氷山の一角にすぎず、税関をすり抜けた密輸個体がペット市場に流入している恐れがあります。

  • 絶滅に追い込む

    ペット利用される野生動物の中にはIUCNのレッドリストで絶滅危惧種に指定されているものもいます。数の少ない珍しい動物ほど、希少価値があり、高値で取引されてしまい、絶滅の危機に拍車をかけていることが懸念されます。日本原産の野生動物もペットとして利用され、絶滅の危機を加速させています。日本の希少かつ固有の野生動物の多くは法律や条約で保護されていながらも、違法に捕獲され海外に持ち出されるケースがあるのです。


※ここで言う野生動物とは、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモットなど家畜化された動物以外の動物を指し、野生捕獲、飼育下繁殖の別は問わない。

高まるカワウソペット需要の裏側にある 悲しい現実を知っていますか?

日本で高まるカワウソの人気は違法取引をも招いてしまいました。
2017年東南アジアで起きた押収事例の70%以上が日本を目的地としており、最大の消費国となっていたことも。

日本が目的地になった生きたカワウソの押収数の棒グラフ

密輸されるカワウソの多くは赤ちゃんカワウソ。水や食料も与えられず、スーツケースなどに閉じ込められて運ばれ、その過程で命を落としてしまうことも。 赤ちゃんカワウソを捕まえるため、親のカワウソは殺されることもあるのが実情です。

2019年よりコツメカワウソはワシントン条約で付属書Ⅰに掲載され、原則商業を目的とした国際取引は禁止とされています。

※ワシントン条約とは

正式名称「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引における条約」
国際取引のための過度の利用による野生動植物種の絶滅を防止し、それらの種の保全を図ることを目的とした条約。国際取引のルールや、規制対象となる希少な野生動植物を「附属書(Appendix)」に掲載し、絶滅のおそれの程度、必要とされる規制の内容に応じて3つに区分(附属書Ⅰ~Ⅲ)しています。附属書Ⅰに掲載された種は、すでに絶滅のおそれがあり、一番厳しい「取引禁止」いう規制の対象となり、附属書ⅡおよびⅢに掲載された種は、生息国の政府が、取引が持続可能であることを確認することを条件に、許可書の申請など必要とされる手続きを踏めば取引が可能です。

私たちにできること

野生のコツメカワウソはこの30年で約30%も数が減っています。
カワウソを守るために「飼いたい」から「守りたい」へ、意識を変えていくことが大切です。

  • カワウソの置かれている状況について知る
  • 正しい情報を周りに広める
  • 保護団体の活動に参加・寄付をする
  • 地球にやさしい暮らしを心がける

カワウソを「かわいい」と思ったら
水族館・動物園へ見に行こう!

átoaのコツメカワウソ

コツメカワウソ お浜とげんげん

átoaに会いにきてね!

コツメカワウソ お浜とげんげんの写真

2頭の日常をYouTubeで公開中!