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企画展「Nature LAB ~自然の法則を活かした未来のデザイン~」 で生きもののすごさを実感!

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2025117日(金)から224日(月・祝)まで、átoa3階「átoa LAB(アトアラボ)」で企画展「átoa×大阪ECO 学生発プロジェクト Nature LAB ~自然の法則を活かした未来のデザイン~」を開催しています。

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◆自然が磨き上げた究極の機能美

地球上の生きものたちは、長い進化の過程でさまざまなカタチを獲得してきました。鳥たちは大きな翼で羽ばたきます。ミツバチは六角形を隙間なく敷き詰めた巣を作り上げます。その姿形は美しく、時に目を奪われるほどです。

そして、そんな生きものたちのカタチは美しいだけではありません。改めて言うまでもなく、鳥の翼は空を飛ぶという究極の機能を果たします。ミツバチの巣は、少ない材料で蜂蜜をたっぷり保管できる上に丈夫です。まるで計算されたかのように無駄のないカタチは、まさに自然が磨き上げた機能美。

私たちヒトは、そんな生きものたちの形態や能力からさまざまな恩恵を得てきました。企画展では、生きものが持つ優れた性質を技術開発に活かす「バイオミミクリー(生物模倣)」に関連した商品・技術を紹介しています。ここでは、その一部をご紹介します。実物や詳しい解説はぜひ展示会場で!

◆生きもののカタチ

企画展に登場するバイオミミクリーに関連する生きものを見渡して、まず感じるのが、生きものの形の奥深さです。

鳥の翼は空を飛ぶための機能美を備えていますが、細かく見ると、種によってさまざまな形をしています。そんな鳥たちに倣い、3種類もの鳥の翼のいいとこ取りをしたエアコンの室外機プロペラファンを展示しています。独特な形をしているのは合わせ技ゆえ。この形によって効率化がはかれ、省エネにもつながるというのだから鳥たちに感謝しなければいけませんね。

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鳥の翼の形を応用したエアコンの室外機プロペラファン(シャープ株式会社)

ホタテガイの殻の表面にある波打つような凹凸は、ヘルメットをより丈夫にする形として取り入れられました。また、テトラポッドの表面の形にも採用され、海中の炭素を固定する海藻類が着生しやすく、ブルーカーボン固定量の増加に配慮するデザインになりました。まさかホタテガイがヘルメットやテトラポッドの役に立つなんて驚きです。しかも、このヘルメットとテトラポッドは、素材としてもホタテガイの殻を使用しているんです。人がおいしく食べて余ってしまった殻を活用。おいしいだけでなく、形のアイディアや素材の恩恵にも預かることができ、ホタテガイには頭が上がりません。

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左:ホタテガイの殻の構造を取り入れたHOTAMET(甲子化学工業株式会社)
右:HOTATETRAPODの縮小模型(清水建設株式会社ほか7社)

他にも、生きものそのものの形ではなく、生きものが作り出した形がヒントになることもあります。皆さんは、ハニカム構造って聞いたことがありますか? ハニカムとは、ハチの巣のこと。正六角形または正六角柱を隙間なく並べた構造のことをハニカム構造と言います。その丈夫で無駄の少ない構造は、サッカーゴールの網や強化段ボールなど、身近なところにもたくさん使われています。企画展では、神戸と淡路島を結ぶ明石海峡大橋のメインケーブルをご紹介。ケーブルの束ね方にハニカム構造が使われているんです。今度、神戸から淡路島に渡るときには、ハチに感謝しながら渡ろうと思います。

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ハニカム構造の明石海峡大橋橋梁ケーブル断面の写真(本州四国連絡高速道路株式会社)

◆見えないカタチ

生きものの形のすごさは、一見してわかるものだけではありません。電子顕微鏡で拡大しないとわからないような微細な構造にも秘められています。

生きもの好きな人なら一度は聞いたことがあるかもしれないヤモリの手足の秘密。ヤモリの手足にはベトベトの粘着剤も吸盤もありません。それなのに、壁や天井を自由自在に歩き回ります。それは手足の表面に特別な構造があるから(細かい説明は会場で!)。企画展では、ヤモリの秘密を応用した革新的なテープで、水の入ったボトルを支えてみました。近くには直接触っていただけるテープも展示しています。本当にこんな表面で張り付けられるの?と驚く触り心地ですが、その力は技術者さんの折り紙付き。ぜひ触って意外性を体験していただきたいです。

そして、アトア2階のゾーン「ELEMENTS」には、ツギオミカドヤモリという巨大なヤモリがいるので、ぜひ張り付く姿を観察してみてくださいね。

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左:水槽の壁面に張り付くツギオミカドヤモリ
右:ヤモリの手足の構造を参考にしたShineGrip®での展示(信越化学工業株式会社)

子どもの頃、恥ずかしながらフタにくっついたヨーグルトを食べていたような記憶があります。最近はフタにくっついたヨーグルトを食べなくなったな、と思っていましたが、これ、私が成長したからだけではないようです。最近のヨーグルトには、ヨーグルトがくっつかないフタが多く採用されています。これは、長年、ヨーグルトのフタについて悩んでいた研究者が水を弾くハスの葉から着想を得て開発に至りました。これも目に見えないレベルのハスの葉の表面の構造がポイントです。展示会場では、フタに使われるシートが水を弾く様子をご覧いただけます。驚くほどよく弾くので一見の価値ありです。

タイルと同じく水槽の中に展示しているのは、汚れが付きにくいタイル。これは、カタツムリがモデルです。カタツムリの殻にも目に見えない秘密があります。その構造のおかげで表面に水の膜ができ、汚れが水とともに流れ落ちるのです。水槽では、タイルの上に汚れと水を交互に垂らしています。毎日汚れをかけていますが、まったく汚れが染みつく気配はありません。

まさか水槽でヨーグルトのフタ(正確には素材となるアルミシート)やタイルを展示する日が来るとは思いませんでしたが、どちらも列記とした生きものに関連する展示です。会場では、どちらも解説動画を流しているので、あわせてご覧ください。

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左:撥水性のあるTOYAL LOTUS®(左:東洋アルミニウム株式会社)
右:汚れが付きにくいナノ親水タイル(右:株式会社LIXIL)

◆色がないのに色がある⁉

企画展の中央に、神々しく輝く看板がそびえ立っています。実は、これ、今回の企画展のため特別に構造色インクジェット技術で印刷されたものなんです。この印刷には、赤・青・黄といったいわゆる色素が入ったインクは使われていません。色素がないので、一見したところ何が印刷されているかわからないような透明なシート。ところが、光を当てると一転、輝いて見えます。下に敷くものや光の当て方、見る角度によって見え方が大きく変わります。これはインク膜内部の特別な微細構造によるもの。やはり肉眼では見えないレベルの話ですが、この構造は自然界の生きものにも見られます。アトアにも構造色の生きものがいます。入り口を入ってすぐの「CAVE」というゾーンには、構造色で青く輝くカーディナルテトラが泳いでいるので、ぜひいろいろな角度からご覧ください。また、企画展では、構造色インクジェット技術で印刷された美しい昆虫やモルフォチョウの実物標本も展示しているので、印刷と生きものの美しさを感じていただきたいです。

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左:構造色インクジェット技術によって印刷された看板
右:構造色インクジェット技術によって印刷された蝶(富士フイルム株式会社)

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青く輝くカーディナルテトラ

◆動きもスゴイ!

ここまではカタチの話題でしたが、生きものの動きから学ぶこともたくさんあります。エスカレーターを上がって3階の企画展会場に到着し、まっさきに目に入るのが真っ白いフクロウの姿。実は、これ、送風機なんです。羽根を上下させることで風を生み出す、世にも珍しい送風機の名前は「はねやすめ」。静かで優しい風が心地よく、見た目にも癒されます。企画展会場の癒しキャラですが、羽根のカタチはフクロウの骨格をモデルにしており、羽根の動きも単純な上下ではなく、鳥の飛翔メカニズムに倣ったもの。しっかりバイオミミクリーです。

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フクロウの骨格と動きを応用した はねやすめ(シャープ株式会社)

◆生きものってやっぱりスゴイ!

企画展では、このブログで取り上げたように、さまざまな商品や技術、そしてそのモデルとなった生きものを紹介しています。企業の方に開発についての話を伺っていると、何年も研究者が悩んだ課題が生きものをヒントにすることでスッキリ解決することもあるようでした。とはいうものの、その時間は一瞬ではなく、生きものたちが何万年もの時間をかけて築き上げてきたからこそ得られたもの。生きものたちの形や能力をお借りできることのありがたさを改めて感じます。環境破壊をはじめとする人の影響で生物多様性が失われている今、もしかしたら人が抱えている大きな問題を解決するヒントも生きものとともに失われてしまうかもしれません。恩恵があるから、という理由だけで語りたくはありませんが、企画展をきっかけに「かけがえのないカタチや機能」という視点からも生きものに目を向けていただけると嬉しいです。

◆開発者の熱意がスゴイ!

この企画展は、バイオミミクリーに関連する商品や技術の開発に携わった14の企業・団体の協力を得て実現しました。中には、設営のために遠方からわざわざ出向いてくださった企業も。どの企業の方々もそれぞれの商品や技術に誇りを持っているのが伝わってきて、その魅力を伝えたいという思いが強くなりました。たくさんの方の熱意がこもった企画展をぜひ見に来てくださいね!

協力:シャープ株式会社・富士フイルム株式会社・信越化学工業株式会社・株式会社LIXIL・東洋アルミニウム株式会社・本州四国連絡高速道路株式会社・甲子化学工業株式会社・清水建設株式会社・北海道猿払村・猿払村漁業協同組合・株式会社ササキ・株式会社不動テトラ・日本国土開発株式会社・株式会社TBWA HAKUHODO ※順不同

◆企画展概要

企画展名:átoa×大阪ECO 学生発プロジェクト Nature LAB ~自然の法則を活かした未来のデザイン~

開催期間:2025117日(金)~224日(月・祝)

開催場所:アトア3FOYER

観覧料:無料 ※別途入場料が必要

展示内容:モデルになった生きものの性質や実際に開発された商品・技術を実物とパネルで展示解説

◆おまけ

今回の企画展は、大阪ECO動物海洋専門学校の学生からの提案をもとに実現しました。展示会場では、他の学生が考案した「3D画像の生きものがフラスコの中を動き回る」作品も同時期に展示します。

↓フラスコ作品は、ぜひ動画でご覧ください!