アトアの飼育員の仕事の1日は、水槽の見回りから始まります。
生き物たちの調子に問題はないか、水槽設備に異常がないかなど、隅々まで観察します。
日々観察していると、いろいろな魚たちの落とし物が見つかることがあります。
今回は、2階MARINE NOTEのゾーンで一番大きな円柱水槽(名称:メガシリンダー)の落とし物を紹介します。
水槽の底を見てみると、中央に白い棒状のものが落ちています。
よく探すと1~10cmぐらいの様々なサイズのものがたくさんあります。
水槽内には、ウシバナトビエイやドチザメ、ユメウメイロなど7種の生きものが暮らしていますが、誰の落とし物なのでしょうか?
メガシリンダーでは、定期的に飼育員が潜水掃除をしています。その時に落とし物を回収しています。
回収後に洗ってみると、いろいろな形のものが混ざっているのが分かります。
では、ざっくりと選り分けてみましょう。
まず、棘や四角いものは、エサに使用しているアジやサバなどヒレの棘や、脊椎などの骨です。
魚の骨などは完全に消化されずに、排泄物に混ざって水槽の底に溜まるんです。
次は、とても小さく数ミリサイズのもので、これらはサメの歯なのです。
メガシリンダーには3種類のサメの仲間が暮らしています。
よく見ると歯の形が違うので、どのサメの歯か見分けることができます。
そして、水槽の外からも確認できた白い棒状のものは、なんと!ウシバナトビエイの歯なのです!
この棒状の歯はどのように生えているのか、想像がつきますでしょうか?
サメの歯は、テレビや本でトゲトゲした歯がずらりと並んだ顎を見る事があると思いますが、エイの顎を見ることは少ないかと思います。
それでは、こちらのウシバナトビエイの顎の標本をご覧ください ↓ ↓
正面から見ると上顎と下顎のそれぞれに棒状の歯が横一列に並んでいます。後ろから見るとその歯はベルトコンベアーのように何列にも続いており、1枚の板のような平らな歯になっています。ウシバナトビエイは、この平らな歯を使い、貝類や甲殻類などの硬い殻をバリバリとかみ砕いて捕食しています。
なぜ水槽に歯が落ちているのかというと、サメやエイは古くなった歯が抜けていくからです。
実は、サメやエイは口の後ろ側で常に新しい歯が出来ており、新しい歯に押し出される形で古い歯が脱落し、ベルトコンベアーのように歯が新しく生え変わる仕組みになっているのです。
抜け落ちた歯は潜水清掃のたびに回収して、約2年でお茶碗1杯分くらいまで集まりました。今後も引き続き集めて、ぜひいつか展示できたらと思います。